アパレル業界のトレンド
当社ブログを拝見して頂き誠にありがとうございます。
当社はアパレル企業専門のコンサルティング会社です。
本ブログはアパレルセレクトショップ、ライフスタイルショップなどの小売店やアパレルメーカーの経営にお役に立てることを目的に作成しています。
さて、昨今、クライアントの現場でよく聞く声をご紹介します。
それは「コーディネート提案でないと売れない」という声であります。
2~3年前から聞く機会が増えてきたのですが、今回のコロナ禍以降、さらに耳にするようになりました。
また現場だけでなく、新聞やメディア等でも言われるようになってきました。
ここ最近の繊研新聞でも次の記事を見かけました。
こちらは2021年3月11日の記事となります。
内容は実店舗の「コーディネート力」を活かして集客を実現している専門店の特集です。
そのうちの1店は、コロナ禍の2020年度でも、実店舗の売上が150%増となり、EC部門の売上を超えたと説明されています。
またこちらは2021年5月17日の記事となります。
アパレル業界大手のタキヒヨー株式会社様の特集記事であります。
誌面1面を使い同社の経営方針を伝えております。
その中でも、最初に説明されていますのが「単品からの脱却~コーディネートで見せる集団に」です。
コーディネート提案の必要性
記事文では「昔は単品提案で値段が通って良く売れました。
しかし今は塊、つまりコーディネートで見せないと消費者には選んでもらえなくなっています。
コロナ禍でそれが一気に加速しました」とコメントされています。
コーディネート提案というと、接客などの現場オペレーションレベルでの技術と思われますが、昨今の状況を見るとアパレルビジネスの経営レベルで無視できないキーワードとなっていると当社では考えております。
それ故、業界大手、上場企業でもあるタキヒヨー株式会社様が、経営方針(経営課題)の1番最初の項目においているのでしょう。
なぜアパレル経営に「コーディネート提案」が重要になってきているのか
それではなぜアパレル経営において「コーディネート提案」が重要になってきているのでしょうか。
その前に、「コーディネート提案」の対義語を確認しておきたいと思います。
それは「単品提案」「アイテム提案」「ブランド提案」です。
個々のファッションアイテムや個々のブランドを強く訴求し提案する方法です。
例えば、「今シーズンのアイテムは新素材のらくちんデニム」とか、「当店では人気ブランンドXを置いています」といった訴求のことです。
対して、コーディネート提案は、単品アイテムやブランドの訴求ではなく、「今シーズンの当店のテーマは、こうなので、スタイルとしてはこのようなコーディネートとなります」といった形での提案となります。
こうして対比してみると解りやすいのですが、「個」として提案するか、「組み合わせ」として提案するかの違いであると理解すれば解りやすいでしょう。
コーディネート提案 が重要となる理由
それではなぜ、「コーディネート提案」でなければ売れないと言われるのでしょうか。
その背景にあるのは間違いなくEC市場の存在でしょう。
なぜならECサイトが最も得意とするのは「単品販売」だからです。
ECショップではサイトにアップする品番数を増やし、検索順位を上げていくことが重要です。
先ほどの単品提案やブランド提案のように「新素材のらくちんデニム」「ブランドX」と検索すれば、関連する商品がいくらでも出てきます。
そして「新素材のらくちんデニム」「ブランドX」はどこで買っても同じものですので、価格の安いサイトや検索エンジンに強いECサイトで購入されていきます。
また売れる商品はどのサイトにも並びますのでECサイト間でも同質化し競争が激化していきます。
そしてコロナ禍以降の巣ごもり消費によりEC市場はさらに拡大してきました。
より「単品販売」「単品提案」の市場が広がっているわけです。
そうすると、「売れているアイテムや人気のあるブランドをただ仕入れて売る」という商売はやりにくくなるでしょう。
なぜなら売れているアイテムや、人気ブランドはネットで検索すれば一番安いサイトで簡単に購入できるからです。
そうなればこうした単品提案中心の品揃えが中心のリアル店舗にわざわざ行く必要がなくなってしまいます。
現在において、客数、売上が落ちている店舗はこうした状況になってしまっている可能性が高いと言えるでしょう。
それではなぜ「コーディネート提案」が重要となるのでしょうか。
厳密に言えばコーディネート提案をすれば売れるというわけではありません。
当然その内容や質が重要となります。ここではその内容、質が十分であるということで話を進めますが、「コーディネート提案」はそのまま店舗の差別化となるからです。
コーディネートはその店舗のコンセプトやシーズンテーマ、世界観から商品構成(MD)となり結果として出来上がります。
他の店舗と同じアイテムが含まれていたとしてもコーディネートとしては全く異なるものとなります。
その内容にお客様が共感することでファンとなり顧客化していくわけです。
マーケティング的にはブランディングとも関連しています。
お客様の感覚としては「あのお店にいけば私の好きな着こなしができる」となるわけです。
そうなった時に単品提案中心のECショップとも差別化され、わざわざリアル店舗に出向く理由となるわけです。
そうすると冒頭にご紹介した繊研新聞の記事にある店舗のようになるわけです。
コーディネート提案を行うために必要なこと
このように説明すると、「コーディネート提案」出来るスタッフがいればいいのかということになりますが、そうではありません。
そのスタッフが提案するお客様には部分的なコーディネート提案は出来ますが、店舗やブランドとして評価されているわけではなくそのスタッフにファンがつくだけとなります。
そういう状態ですとそのスタッフの個人数値は上がっても店舗やブランドとして実績を上げていくのは難しいでしょう。
コーディネート提案出来るスタッフがいるだけで、店舗、ブランド、会社としてコーディネート提案できるわけではないわけであります。
店舗としてのコーディネート提案
それでは店舗、ブランド、会社として「コーディネート提案」を高くしていくためにはどうしたら良いのでしょうか。こう言うと「感性を高めれば良い」と言われる方もいますがそれだけでは全く足りません。
何故ならば、コーディネートはVMDの一部となりますので店舗としての見せ方、VMDの力が重要となります。
VMDはMDと関連していますので、コーディネートとVMDを機能させるMD計画が必要となります。
またMD計画はショップコンセプトやシーズンテーマから作られていきます。
また先ほどのようにコーディネート提案出来る接客力を持つスタッフが多くいなければなりません。
そのためにはOJTや研修制度も重要となっていきます。
このあたりのオペレーションのプロセスや実務品質が高くないとならないわけです。
組織的な連携の必要性
さらにある程度の規模の会社であればこうした実務を担う商品部・企画部での業務プロセスや役割定義も明確でなければなりません。
また店舗を支援する本部やエリアマネージャーの支援体制や役割も重要となっていきます。
これらは組織的な連携体制がしっかり出来ていないと機能していきません。
つまり「コーディネート提案」を店舗、ブランド、会社として強化していくためには、これらの要素を強くしていかなければならないわけであります。
そうして初めて、お客様に響く「コーディネート提案」を店舗、ブランド、会社として実現できることになります。
そのように考えると、「コーディネート提案」を高めるためには、アパレル経営や組織そのものを強くしていかなければならないわけです。
先ほどの繊研新聞では上場企業の社長様が「コーディネート力強化」を経営方針(経営課題)の第一に掲げていました。
それは単に「コーディネート提案」をしましょうと言っているのではなく、経営改革として「コーディネート提案出来る組織を作りましょう」と言っているわけであります。
先ほどの記事を読み返して頂けると解りますが「ニューノーマルに即した企業体構築」というタイトルがあります。
つまり企業体構築を行うことでコーディネート提案できる会社にしようと経営方針の第一と掲げているわけです。
実際に読んでいくと、「コーディネート提案」を行うために組織改革や販売戦略の再構築などの施策を中心に進めるという内容となっています。
これが上場会社のアパレルメーカーでも「コーディネート提案」が経営課題の第一となっている理由であります。
アパレル経営の強化のために
当社ではこうした「コーディネート提案」を可能とするアパレルの経営力や実務力を、経営力(4つの要素)と実務力(7つの要素)として定義しています。またそれらを評価する事業デューディリジェンスを実施しています。
アパレル業界の事業デューディリジェンスについてはこちらのブログをご参照くださいませ。
事業デューデリジェンスの専門家から見たビジネスDDにおいて重要なこと
また、これらの経営力、実務力を強化するためのコンサルティングとして「アパレルFDCA経営コンサルティング」を行っています。
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